日本倫理道徳教育学会 大会報告

第8回大会報告

2023年12月10日(日)、日本倫理道徳教育学会第8回大会がオンラインで開催されました。

 

当日、10時から11時30分まで開催された自由研究発表では、まず、青木孝頼の道徳の指導理論における教材の特徴に関する発表があり、青木の本音を出すことをよしとしない人間観について質疑が行われました。つぎに、フランスの道徳・公民科における芸術の取り扱いについてコレージュ用教材に着目した発表があり、市民教育に資する芸術の用い方に対する質疑が行われました。最後に、高校公民科「公共」における試みを手掛かりとした主権者教育としての哲学対話の可能性に関する発表があり、大学生をファシリテーターとした実践の在り方について質疑が行われました。

 

また、13時40分から16時40分まで開催された公開シンポジウムでは、「道徳教育(小・中学校)と倫理教育(高等学校)からみた「現代的な課題」を扱う授業づくり」と題して、他の教科とは異なる「道徳」および「倫理」科目ならではの「現代的な課題」への取り組み方および、そこから生じる問題やその解決方法等について議論が行われました。具体的には、小学校の「道徳」および高等学校の「倫理」を担当している教員が、実際にどのように「現代的な課題」を取り上げてきたか、また授業実践を通して、どのような改善点が見えてきたかを報告し、それらの実践報告を踏まえ、道徳および倫理分野の研究者が、「道徳」「倫理」科目において「現代的な課題」を扱う際に、どのような点に注目・留意する必要があるかということについて、理論・方法論的な観点から検討が行われました。

 

シンポジウムの詳細は『倫理道徳教育研究』第八号(2024年3月発行)にて掲載予定です。会員の皆様には3月頃お手元にお届け致します。また、紀要は1冊1000円にて一般販売しております。詳しくは本ホームページ「『倫理道徳教育研究』各号の目次一覧と購入方法」をご覧ください。

 

その他、総会において学会運営に関する諸報告がなされ、会則の改定および『倫理道徳教育研究』投稿/執筆規程の改定に関する説明と役員の交代が行われ、承認されました。(詳細は、「日本倫理道徳教育学会 会則(2023年12月10日改定版)」、「『倫理道徳教育研究』投稿/執筆規程(2023年12月10日改定版)」、「日本倫理道徳教育学会 組織」をご参照下さい。)

 

今回も、これまで同様、倫理や道徳を主たる関心とした研究者や実践者らが一堂に会し、相互のフィールドに基づき、多くの意見交換の機会がもたらされるものとなりました。

第6回大会報告

2021年12月12日(日)、日本倫理道徳教育学会第6回大会がオンラインで開催されました。


当日、
10時から12時まで開催された自由研究発表では、二つの会場が設けられ、A会場では道徳性と学力の育成に関する発表から始まり、大学作文教育における対話と倫理観を取り上げたものや司法臨床領域から倫理・道徳教育について考察したもの、さらには考える倫理の授業開発に至るまで、B会場では、哲学史教育と対話の関係について考察したものから、林竹二の哲学する授業における学習プロセスと教育学的意義について言及したもの、さらにはB.ロナガンの認知理論からみた対話の意味など、今回も、倫理や道徳を主たる関心としつつも、非常に幅広く、多様な研究関心、領域、フィールドに基づく自由な研究発表が見られました。

また、13時30分から16時30分まで開催された公開シンポジウムでは、「倫理・道徳教育における"対話”を考える~p4c、モラルジレンマ型討論、人権教育プログラムの事例から~」と題して、それぞれの理論や実践に見られる対話の特徴や事例などについて紹介がなされたあと、パネリスト間やフロアとの間で意見交換がなされました。とりわけ、あらかじめ内容項目や教科書などが用意されている道徳教育にそれぞれ特徴を有した「対話」を取り入れていくことができるのか、その可能性や課題についてディスカッションがなされました。本学会の特色である倫理学分野の会員の方々を交え、活発な交流がなされました。

シンポジウムの詳細は『倫理道徳教育研究』第五号(2022年3月発行)にて掲載されています。紀要は1冊1000円にて一般販売しております。詳しくは本ホームページ「『倫理道徳教育研究』各号の目次一覧と購入方法」をご覧ください。

以上、本年度は二回目のオンライン開催であったこともあり、チャットへの書き込みなども含めてより多くの意見交換の機会がもたらされるものとなりました。

第5回大会第報告

2020年12月26日(日)、日本倫理道徳教育学会第5回大会がオンラインで開催されました。


当日、
10時から12時まで開催された自由研究発表では、『道徳と宗教の二源泉』の著者としても有名なアンリ・ベルクソンの「笑い」論から「いじめ」について考察したものから始まり、今日、「国際教育」という名のもとに求められる「SDGs」等の授業の在り方を「倫理道徳教育」における「対話」との関係性や接続可能性を念頭におきながら考案したもの、さらには倫理分野で法を扱うことによって、高校生にも法に関する根元的な学びをもたらすことができるととらえ、実際に作成された教材を紹介したものや、中国の道徳教育のめぐる最近の動向について、とくに小学校低学年で行われている「道徳と法治」の特質について解明したものまで、今回も、倫理や道徳を主たる関心としつつも、非常に幅広く、多様な研究関心、領域、フィールドに基づく自由な研究発表が見られました。

また、13時30分から15時まで開催された特別講演会では、山形大学の吉田誠教授から、「理想主義・現実主義および行為主義・人格主義の相補軸に基づく道徳教育の方法原理」と題するご講演がありました。ご講演ではまず、道徳教育の方法をめぐる議論、相互批判や対立がメタ理論的な研究の不足からくるものであることが指摘され、ついでデュルタイ思想の現代的解釈に基づき明らかにした「理想主義・現実主義および行為主義・人格主義の相補軸平面上に倫理学における正しさの決め方や道徳教育方法を配置し、相互に関係づける方法により、複数の道徳教育方法や倫理学的な捉え方を目的や状況に応じて柔軟に適用する解決策」が紹介されました。ご講演は適宜、事例などを入れながら分かりやすく話されていたことや、また本学会の特色である倫理学分野の会員の方々もおられたことから、質疑も充実したものとなりました。

ご講演の詳細は『倫理道徳教育研究』第4号(2021年3月発行)にて掲載予定です。会員の皆様には3月頃お手元にお届け致します。また、紀要は1冊1000円にて一般販売もしております。詳しくは本ホームページ「『倫理道徳教育研究』各号の目次一覧と購入方法」をご覧ください。

その他、総会において学会運営に関する諸報告がなされ、『倫理道徳教育研究』投稿/執筆規程の改定に関する説明が行われました。(詳細は、『倫理道徳教育研究』投稿/執筆規程(2020年12月26日改定版)をご参照下さい。)

※なお、『倫理道徳教育研究』投稿/執筆規程はその後、さらに改定がなされておりますので、『倫理道徳教育研究』投稿/執筆規程
(2021年3月1日改定版)を合わせてご参照下さい。

以上、本年度は、初めてのオンライン開催ではありましたが、当日はトラブルもなく、なかには動画配信にとどめる学会も少なくないなか、同時双方向型で対面と比べても遜色のない大会となりました。むしろ、質疑の際はチャットを併用するなど、オンラインならではの利点も実感される貴重な機会となりました。

第4回大会報告

2019年12月22日(日)、東京大学本郷キャンパスにて、日本倫理道徳教育学会第4回大会が開催されました。

 

当日、10時から12時25分まで開催された自由研究発表では、倫理や道徳に関する内容を教科科目横断的な観点から、具体的には英語で学ぶ可能性について検討したものから始まり、多忙極まる昨今の教育現場において、教師の倫理観や規範意識を高めるための実践事例を紹介したもの、20 世紀のカナダに生まれ、イエズス会のカトリック神学者であり哲学者でもあったB・ロナガンの認識理論を介して倫理的課題を把握することと倫理的に考え行動することの相互補完性について検討したもの、米国を拠点とするNGO「歴史と私たち自身に向き合う(FacingHistory and Ourselves)」(以下FHAO)の一環として香港のワークショップに実際に参加した経験を踏まえて、現実世界の具体的な事実を題材として学ぶ道徳教育の在り方について考察したもの、臓器移植という難しい題材を取り上げることについての可能性と課題について検討したものといった、倫理や道徳を主たる関心としつつも、非常に幅広く、多様な研究関心、領域、フィールドに基づく自由な研究発表が見られました。

 

また、14時00分から17時まで予定されていた公開シンポジウムでは、「「公共の扉」―特別の教科「道徳」と高等学校公民科との接続点」というテーマで、事例発表とそれに対するコメント、フロアとの質疑応答などが行われました。今回は例年とは少し趣向を変えた形で行われ、まずは提案者である桑原直己氏(筑波大学人文社会学系教授)から趣旨説明がなされた後、高校「公共」(倫理的課題含む)と小中「道徳」の接続を意識しながら筑波大学の院生たちによって考案された4つの事例が主たる話題として提供されました。基本的にはそれら4つのアイデアに対して、和田 倫明氏(東京都立産業技術高専教授・元都倫研事務局長)、井上 兼生氏(聖学院大学特任教授・元埼玉県立高校教諭)、澤田 浩一氏(國學院大學教授・元文部科学省教科調査官)のお三方より、それぞれの知見に基づく建設的なコメントがなされました。最後はフロアとの忌憚のない意見交換や質疑応答などが繰り広げられましたが、どの事例に対しても多くの可能性が指摘され、本年も予定されていた時間をオーバーする活気のある回となりました。

 

とくに、本年度は、会長、副会長のご退職の年ということや、会場、テーマ、話題提供者等、話題性のある事柄が多かったためか、非正規会員の方の臨時参加も例年より多かったように思われました。また、そうした外部の参加者の方々からも忌憚のない質問や意見などがなされていたのが印象的でした。

 

その他、総会において学会運営に関する諸報告がなされ、とりわけ今年度から島村絵里子会員が事務局次長として新役員に加わった旨、報告がありました。また、『倫理道徳教育研究』投稿/執筆規程の改訂案が示され、審議の結果、承認されました。(詳細は、『倫理道徳教育研究』(12月22日改定版)を参照下さい)。

 

以上、大会のシンポジウムの様子は『倫理道徳教育研究』第3号(2020年3月発行)にて掲載予定です。会員の皆様には3月頃お手元にお届け致します。また、紀要は1冊1000円にて一般販売もしております。詳しくは本ホームページ「『倫理道徳教育研究』各号の目次一覧と購入方法」をご覧ください。

第三回大会報告

 

20181020日(土)、筑波大学筑波キャンパスにて、日本倫理道徳教育学会第三回大会が開催されました。 

 

当日、10時から1155分まで開催された自由研究発表では、ハイデガーやアーレントの公共性概念を導線にしながら高等学校の新科目である「公共」の可能性について検討したものや「子どもの哲学」における教師の役割とはどのようなものであるべきかに関する試論、19世紀フランスにおいて「芸術のための芸術」を掲げたテオフィル・ゴーティエの道徳観の解明を目指した「美」や「魂」の概念の探究や現代中国における「道徳と法治」の特質の解明など、大変多岐に渡る意欲的な発表が行われました。 

 

また、1415分から16時まで予定されていた公開シンポジウムでは、「これからの日本社会における倫理教育・道徳教育の正当性の基盤について考える」というテーマで提案・議論が行われました。前半は、桑原直己氏(筑波大学人文社会学系教授)によるコーディネートのもと、頼住光子氏(東京大学教授)、上村崇氏(福山平成大学教授)、吉田誠氏(山形大学教授)のお三方からご提案いただき、後半はフロアからの参加により、活発な質疑が行われました。頼住氏からは倫理学・日本倫理思想史研究のお立場から、上村氏からは応用倫理学(教育倫理)のお立場から、吉田氏からは歴史理性批判、進化心理学、脳神経科学といった多面的なアプローチからそれぞれご提言いただきましたが、どのご提言に対しても多くの質疑が行われ、またそこから更に発展的な課題や論点が浮かび上がるなどして、予定されていた時間をオーバーする、白熱した討論会となりました。 

 

さらに、本年度は新たな試みとして、午前と午後の間の時間帯を利用して、任意の参加者による簡単な情報交換会が設定されましたが、若い会員を中心にラウンドテーブルのような形で日ごろの実践や研究などに関する意見交換がざっくばらんに行われていたのが印象的でした。

 

 

その他、総会において学会運営に関する諸報告がなされるとともに次年度の開催について、20191215日(日)を第一候補として提案がなされ、とくに大きな変更がなければこの方向性で準備を進めていくことが申し合わされました。(※その後、会場の都合により、次回第四回大会は2019年12月21、22、23日のいずれかに東京大学キャンパスにて開催する方向で調整されておりますので、ご注意下さい。)

第二回大会報告

2017年12月10日(日)、筑波大学東京キャンパス文京校舎にて、日本倫理道徳教育学会第二回大会が開催されました。

 当日、10時から1215分まで開催された自由研究発表では2会場で8件の発表がありました。道徳科や公民科の授業のあり方について検討するものから諸外国と比較したり原理的な考察をしたりするものまで、多岐にわたるテーマの発表が行われ、有意義な議論が展開されました。

1310分から1320分までの総会において、学会運営に関する経過報告がなされた後、1320分から1530分まで開催された公開シンポジウムでは、「倫理教育および道徳教育における評価の問題について考える」というテーマで提案・議論が行われました。前半は、桑原直己(筑波大学人文社会学系教授)によるコーディネートのもと、西野真由美(国立教育政策研究所)、井上兼生(聖学院大学政治経済学部特任教授)、吉田武男(筑波大学人間系教授)のお三方からご提案いただき、後半はフロアからの参加により、活発な質疑が行われました。


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